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■大中型まき網漁業

 まき網漁業は、魚群の回りを逃げられないように網で取り囲み、網を徐々に狭めて魚を獲る漁業です。まき網漁業は使用する船舶の大きさ等により、大中型まき網漁業(総トン数40トン以上)、中小型まき網漁業(総トン数40トン未満)に分類されます。また、大中型まき網漁業のうち、1艘まきでかつお・まぐろ類を獲ることを目的としたものもありますが、我が波崎船団はイワシ、アジ、サバ等の多獲性魚種を獲ることを目的として操業しています。

大中型まき網漁業

船団構成員と乗組員、乗組員の職階配置

■船団構成員と乗組員■

 まき網漁業の1船団は網船1隻、魚探船1隻、運搬船1~2隻、レッコボート及び搭載艇3隻からなり、各船がそれぞれ役割分担をして操業を行います。近年、波崎船団は経営改善、省エネのため船団構成の縮減に取り組み、網船兼運搬船1隻、運搬船1隻、レッコボート数隻体制に移行しています。1船団の乗組員は46名程度で、網船に船団の最高責任者である漁撈長が乗船します。そして各船には船長、機関長が配置されます。新規に乗組員となった場合には、甲板員、機関員として漁業に従事することになります。

【乗組員の職階配置】

漁労長

船長

機関長・通信長

航海士・機関士

甲板員・機関員

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■波崎のまき網漁業の歴史

 鹿島灘近海の漁業には江戸時代より八手網、投網などさまざまな漁法がありましたが、明治27年、稲村喜太郎が、波崎ではじめて導入した揚繰網漁法は、町の漁業の近代化の布石となりました。揚繰網はまき網の一種で、イワシやサバなどを2艘の漁船が連動して、魚群を網にからめとる効率の良い漁法で、その後の漁法の主流となりました。ことに大正期に漁船の動力化が進んでからは、漁場が仙台沖にまで拡大して、漁獲量は急増しました。

はさきのまき網漁業の歴史
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◎一航海の操業

 まき網漁業は、対象魚種を巨大な網で巻き取っていく漁法であるため、魚が分散している状況では充分な効果を発揮することができません。このため、魚が密集した魚群を形成していることが大前提であり、何よりも密集した魚群の探索・発見が重要となります。

操業の模式図

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 乗組員は出港の30分〜1時間前には船に集合し、エンジンを始動して、計器類、機械類の調整を行います。

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 前日の漁況、海況及び気象の情報に漁撈長の経験を加え魚群探索海域を決定いたします。1船団を構成する網船、運搬船の全船が魚群探知機、スキャニングソナーを使用し、魚群を探索します。魚群発見後はスキャニングソナーにより魚群の移動方向や速度を確認します。また潮流計により潮流の方向や速度を確認し、入網後の漁網の網なりを予測します。これらの情報を勘案し、魚群の進行方向を遮るように、かつ漁網の中心部に魚群がぶつかるように円状に投網していきます。円状につながった漁網の下部を絞り袋状にします。その後バランス良く網を巻き上げ、漁獲物を運搬船に積み込みます。1回の操業には約2時間かかります。

揚網が終わりに近づくと漁獲物を取り込むため運搬船が網の端に付きます。

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漁獲したサバを魚槽へ収容する。

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 操業の合間や操業後に乗組員は食事を済ませます。

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 運搬船の乗組員は、漁獲物の陸揚げ、氷の積み込み作業を行います。その他の乗組員は、網の修理やエンジンの整備などを分担して行い、次回の操業に備えます。終了後、解散となります。

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その他の漁業

遠洋かつおまぐろ漁業

 生きた小魚を撒いて魚を集め、えさに似せた釣り針をつけた竿でかつおやまぐろを主な対象魚として釣り上げます。遠洋かつおまぐろ漁業は公海や外国の沖合で長期的な操業を行う、規模の大きな漁業です。我が波崎には、この遠洋かつおまぐろ漁船が2隻所属しており、この所属船の漁獲量は全国でも5本の指にはいるほどです。1航海はおよそ1ヶ月あまり、年8〜10回程度しか日本の港に戻ってきません。

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しらすうなぎ特別採捕

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 うなぎはマリアナ諸島沖、スルガ海山近深海で産卵孵化します。そしてレプトケファルス(柳状の幼生)が黒潮にのって北上、晩秋から冬にかけて日本列島に流れ着きます。その後変態してしらすうなぎと言う稚魚になります。河川や、干潟などで何年か暮らし、生魚となった後、産卵のためまた川を下り、はるか南方を目差します。河川に流れ着き、遡上を始めたしらすうなぎを採る漁が“しらすうなぎ特別採捕”です。天然物のうなぎは全体の2%程度であり、市場に出回っているうなぎのほとんどはしらすうなぎ特別採捕によって採取された稚魚を人工的に養殖し、育てられたものです。

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船びき網漁業

 船びき網漁業はシラス、イカナゴ、オキアミなど多様な魚種を漁獲することで、海況、漁況変動などにも対応できることから5t未満船の基幹漁業です。 出漁と同時に魚探を作動させ、魚群を探索します。反応を識別したら、魚群を中心に置くように左舷から左端の曳網を投入し、全速で反時計廻りに円を描くような形で左荒手、左袖網、袋網、右袖網、右荒手、右曳綱の順で投網します。左曳き綱の先端の浮きまで駆け回って、曳綱を取り込み、両曳綱の端を船に固定し、全力で両袖網間隔が萎むまで曳網する。袖網がそろったら、曳綱をはずし、船尾の対のボールローラーで捲き上げます。胴尻近くになったらローラーからはずし、右舷側に据え付けてある小型のボールローラーに移し替えて胴尻を船上に取り込みます。取り込んだ胴尻を開放し、シラスをかごに入れて砕氷とともに攪拌し、急速冷却した後、砕氷を充分効かせてシラスカゴに移し、魚そうで保管します。

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■小型船と魚群探索機器の歴史

 魚探は昭和35年頃から大型船で使われていた中古の50kcが導入されるようになり、昭和40年代になるとシラスが良く識別できる400kcが用いられるようになりました。その後、昭和50年代になると試験船「ときわ」で50kc、200kcを併用してオキアミ調査を行ったところ、オキアミ、シラス、イカナゴの識別に効率的なことから、2周波魚探が普及していきました。ブラウン管、カラーブラウン管魚探と開発が進み、最近ではシラスモード付き魚探が普及しつつあります。

えび板びき網漁業

 5t未満船が主体とした漁業種類で、サルエビなどを主に漁獲します。操業は昼、夜ともに行われますが、夜曳きが一般的です。夕方4時頃出航し、朝方帰ってきます。漁場に着くとエンジンのクラッチを切って惰力で船を前進させ、船尾より胴尻から投入し、網ペンネントを入れたところで、一時固定し、船を2/3速で前進させて網成りをみます。網成りがよければ続いてドウマキ・スカシまでいれたところで半速にし、開口板、曳綱を投入、固定します。全速にして開口板の広がり具合を確認してから曳綱をのばしていきます。揚網は曳綱をキャプスタンにより手木まで捲き上げ、手木から胴網までを船尾のボールローラーで捲き上げます。

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沖合底びき網漁業

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 15t以上の漁船によって行われ、主に水深50~1000mの海底を袋状の網でひき、底近くにいる魚を漁獲します。  ヒラメ、カレイ、アンコウ、ボタンエビ、シライトマキバイなどを主に漁獲します。操業は昼夜問わず行われます。1航海は通常1泊2日、午前2~4時頃出港し、翌日の明け方、帰港します。開口板により網口を広げた網袋を船尾で曳く漁法はえび板びき網漁業の漁法と同様です。

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貝けた網漁業

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 海底の砂泥にいる2枚貝を櫛状のツメを持つ「桁(マンガ)」と呼ばれる器具を曳くことにより砂泥ごと掘り起こし、うしろにつけた袋網で砂を漉して貝のみを漁獲します。漁獲の対象となるのはハマグリ、ホッキガイです。ハマグリ、ホッキガイとも同様の漁法で、漁場に到着すると曳綱の端を船尾のビットに固定した状態で2丁の桁を船尾から両舷へ投入し、曳綱をのばしたあと、海岸線に平行して曳いていきます。曳網速度は個人差があるようですが、1分間に1m程度のスピードと言われています。速すぎると貝が割れたり、舌喰いが多くなります。

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固定式さし網漁業

 固定式さし網漁業は通称「建網」と呼ばれ、6月中旬~9月末日の期間に行われます。鹿島灘地区においては、第2種共同漁業権に基づく固定式さし網の漁場があり、漁期や操業規則等は漁業権を共有する漁協で組織する鹿島灘漁業権共有組合連合会の建網資源管理委員会で決められます。  漁網は100間切り6反を連結したものを10~15ホデ用います。漁具は沿岸線に沿って南北方向に設置していきます。漁場に着くと海底の様子を魚探で探り、潮流の状態をみきわめて漁具の投入位置と方向を決めます。  投網は夕方、揚網は翌朝行いますが、当地区では揚網時に投網も行います。

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曵釣り漁業

 曳釣りは、船尾から左右両舷から横に張り出した竿と船尾に垂直に立てた竿に疑似餌を取り付け、季節や対象魚種にあわせて水深を調整しながらひきまわして漁獲します。  主な対象魚種はカツオ(春と秋)、サワラ(冬~春)、メジ(秋~冬)、イナダ(秋)、ヒラメ(冬)などです。

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その他の漁業
小型船と魚群探索機器の歴史

とる漁業からつくり育てる漁業へ

 海の水産資源を減らさないために、神栖市波崎の沿岸地域では、これまでハマグリ、ヒラメなどが放流されております。このように、現在は、神栖市波崎の沿岸地域でも、つくり育てる漁業が行われています。このように、卵から育てた稚魚を海に放流してからとる漁業を「栽培漁業」といいます。

■はさきの海に放流されている水産種苗

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ハマグリ

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ヒラメ

鹿島灘はまぐり(和名:チョウセンハマグリ)は、水深5~10mの砂地に生息しており、海水中の植物プランクトンを餌としています。稚貝の時期、貝殻に頂紋【ちょうもん】とよばれる2本線が見られるのが特徴です。天然の海では、ふ化から約3年で3cmになります。

ふ化してから120日前後で大きさは100mm程度に育ち、放流されます。 また、おおむね1年で300mm程度になり、とれるようになります。

■『栽培漁業』と『養殖漁業』の違い

 栽培漁業とは、卵から稚魚になるまでの一番弱い時期を人間の手で守り、その後、自然の海に稚魚を放流し、成長したものをとる漁業で、これには、海の中の魚の数を減らさないようにするなどの効果があります。養殖漁業は、一般的に、稚魚をイケスなどで飼育し、食べられる大きさになったら出荷する漁業で、これには、とれる量がいつも一定ではない魚を、安定して食卓に届けることができるなどの効果があります。ちなみに、 神栖市波崎では養殖漁業は行われていません。

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漁業体験

 漁師さんと一緒にいつも漁師さんが実際に使っている漁船を使って刺網漁・カゴ漁を行う体験です。前日に仕掛けておいた網やカゴを漁師さんと一緒に引き上げていきます。魚が獲れているかどうか、ドキドキ緊張の瞬間です。普段では見ることが出来ない海上からの風景を眺めることができます。

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